経営セーフティ共済 解約時の注意点
経営セーフティ共済と税制改正の背景
制度の本来の目的
経営セーフティ共済(倒産防止共済)は、得意先の倒産による連鎖倒産を防ぐための制度で、支払った掛金は全額損金として計上できます。中小企業にとって重要な制度の一つです。
問題となった利用方法
しかし、この制度が本来の目的から外れ、税金の繰り延べ手段として利用されるケースが多く見られました。
- 税金を減らす目的での利用
- 解約手当金の返戻率が100%になるタイミングで解約するケースが約33%存在
- 解約後、短期間で再加入するケースが80%以上存在
問題のあるサイクル:
「全額損金で税金を減らす → 解約手当金100%を受け取る(経費を充当し課税を回避)→ 解約後短期間で再加入し、再度全額損金で税金を減らす」
このような状況は、制度本来の「連鎖倒産の防止」という趣旨から逸脱しているため、税制改正が行われることになりました。
税制改正の具体的な内容
重要な変更点:
- 解約日から2年以内に支払う掛金は損金として認められなくなります
- この改正は、令和6年10月1日以降の解約から適用されます
これにより、令和6年10月1日以降に共済を解約し、その後再加入しても、解約日から2年以内に支払う掛金は経費として計上できなくなります。中小企業の皆様もこの改正に注意が必要です。
税制改正への対策
この改正を回避するための一つの対策として、9月以降が決算月の会社であれば、決算月を変更する方法が挙げられます。
9月決算の会社の場合の対策例
- 決算月を9月から8月に変更(これにより当期は11ヶ月決算となる)
- 経営セーフティ共済を9月に解約し、解約手当金800万円を「期首で」収益に計上する
- この800万円の収益には、何らかの経費を充当する
この方法により、解約による利益が計上される会社でも、今回の税制改正の影響を回避できる可能性があります。
注意:この対策を実施するかどうかは慎重な判断が必要です。広島市の税理士である新井会計にお気軽にご相談ください。
税制改正に関する全般的な考え方
税制改正には必ず適用開始日や開始時期が設定されています。
決算月変更が有効な場面
- 節税策が封じられる前にその方法を活用したい場合
- 納税者有利の新しい税制を早期に適用したい場合
このような場合には、「決算月の変更」が有効な手段となることがあり、中小企業の税務戦略において重要な選択肢です。
決算月変更に関するその他の考慮事項
追加のメリット
決算期末近くに大きな収益が見込まれる場合にも、決算月を変更することで、その収益を翌期の期首に計上できるというメリットがあります。
税務調査での扱い
- 決算月を変更した場合、翌期に元の決算月に戻すことについて問題となったケースは報告されていません
- 同様の状況が起きた場合に再度決算月を前倒しすることについても問題となったケースは報告されていません
デメリット:頻繁に決算月を変更すると、各期の月数が変動し、業績の前期比較が困難になります。
そのため、決算月の変更は、基本的に緊急避難的な措置と考えるべきです。
新井会計 新井航税理士事務所
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